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冊子「3.11 高校生犠牲者からの 命を守る『伝言』」。犠牲者が出た公立高校35校と犠牲者数の地図も

 仙台から1通の封書が届いた。東日本大震災直後、宮城県教職員組合の委員長を務めていた、みやぎ教育文化研究センター所長の高橋達郎さん(68)からだ。

 開封すると、早緑(さみどり)色の冊子が出てきた。表紙には「3.11 高校生犠牲者からの 命を守る『伝言』」とある。県内の公立高校生の最期を調べた結果がまとまったという。「やっとできましたね」。私は思わず冊子に黙礼した。

 私が初めて高橋さんに取材したのは2014年。公立小中学生の死者・行方不明者261人が東日本大震災でどのように命を奪われたかを、13年から県教組で調べていた結果がまとまったときだ。学校の事故報告書の開示を求め、報告書のない9教委17校は組合員で聞き取り、1年かけて237人分を集めた。

退職後、ひとりで高校を調査

 退職直後の20年、高橋さんは高校を1人で調べだす。県教委に事故報告書の開示を求めたが、回答は「不存在」。再審査請求すると、学校別の人数がわかる資料などが出てきた。ただ氏名や居住地は黒塗りだ。該当校にアンケートし、未回答の学校には7回督促。当時の教職員にも聞いた。87人中68人がわかるまでに今度は3年かかった。

 結果を見ると、短行の記録が…

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